2009年9月2日水曜日

松谷先生の授業#1


先週の水曜日、松谷明彦先生の講義を受けた。
3回の連続講義の初回で、テーマは人口減少社会。



いま日本は人口が減り、かつ高齢化していっていることは知っていた。
それを改善させようと政府をはじめ各機関が少子化対策をしていると
思っていたのですが

○ 人口は増えない
○ 高齢化は止まらない
○ 少子化対策は、人口増加・高齢化抑制の効果はない

という講義内容で、衝撃的でした。


わが国の人口構成の特徴

わが国の人口のピークは2004年。人口減少社会になってからもう5年目で
今後、100年の単位で人口は増加しない。

そして、高度な社会で、減る一方の人口減少は、世界の中で日本が
初めて体験すること。


主要先進国の高齢化率

高齢化は先進国に共通するが、わが国は高齢化のスピードが極めて早く
しかも人口が減少していく。
人口減少を前提とした経済学はまだ無く、過去の経験が役に立たない。

なぜ、日本だけが人口が減るのか?
それは50年代初めからの産児制限(1948年施行の旧優生保護法)の結果、
人口の谷(歪な人口構成)を作ってしまったから。



敗戦後にベビーブームとなったが、食糧難から、優生保護法を制定して、
人口の増加をくい止めるため、中絶(堕胎罪の例外)を許した。これで
300万人から150万人に出生数が激減した。

そのため、戦後のベビーブームとその後の産児制限で山(団塊の世代)と
谷になり、これが以後、わが国の人口構成を決めることになった。


少子化対策は効果がない?

これまでの少子化は、出生率の低下が原因だった。

既婚女性の出生率は2前後で、実は大きく変動していない。
それでも出生率が下がっているのは、結婚する人が減ったから。

 理由1 女性の生き方が変わり、結婚を選択しない女性が増えた
 理由2 結婚できない男性が増えた

結婚できない男性が増えたのは、「所得水準が低い」から。
もともと終身雇用を前提に作られた給与制度(勤続が長くなるほど
給与カーブが上昇する)では若者の給与水準は低い。
さらに非正規雇用が急増して、その雇用の質による賃金格差が
大きいことから、低所得の若者が増えてしまい、結婚する人が
減っている。

これは雇用環境を良くしないと、改善しない。
(子供手当てのような)目に付くところだけでなく、
総合的な政策が必要になる。

それでも、他国の例を見ると、趨勢として底を打つだろう。
ただし、出生率の大幅な上昇は見込めない。

出生率が底打ちするとして少子化が止まらないのはなぜか。

これからの少子化は、25~39歳(子供を産む可能性の高い年代)の
女性の人口が急激に減少していくことによる。
 2000年 1300万人 → 2030年 800万人 → 2055年 480万人
 わずか半世紀で三分の一!

人口の谷を作ってしまったわが国では、この傾向は避けられない。


出生者数と死亡者数

したがって、少子化対策を採っても、人口が増えたり、高齢化が
止まることは無い。(少子化対策というと誤解してしまう)

人口減少・高齢化を前提とした政策に転換しなければならないし
冷静な政策の順位付けが必要になる。

その政策が社会的に本当に必要か。
「かわいそうだ」は判断基準に成り得ない。


経済社会はどう変化する

ここからは次回の講義につなぐ形で問題を指摘していった。

○ 労働力が高齢化する
 新しいものを生み出すのが東京の魅力。
 しかし、東京の直面する現実は...
 ・ 労働力の高齢化
 ・ 若年労働力の激減
 ・ サービス化経済によって、未熟練労働者が極めて多い
  (熟練による付加価値増加=賃金上昇が期待できない)
 それに対応した産業構造の変化が必要になる。

 中国・インドの企業と価格競争するとしたら、いまのままで単純に
 「高齢労働者の活用」で企業は成り立つのか?



 現役年齢引き上げを解決策として言うが、それはいいことなのか。
 65歳以上で働いている人は、日本29.9%に対して、フランス2%、ドイツ4%
 米国で19%だ。
 60歳を過ぎるとどうしても生産性は衰えてくる。そうした人が
 安心してリタイアできる社会を考えていく必要があるのではないか。
 (これは、考えの方向性として正しいと思う)

労働力の年齢構成

 価格競争にされられないイノベーションを起こすのは天才。
 天才を育てる教育環境を作るのは一つの解決策。
 価格競争にさらされない高付加価値の商品を作るのは、熟練による。
 労働者を匠にしていく必要がある。


○ 都市部は高齢化、田舎は過疎化
 東京圏は人口こそ減らないが、高齢化が急速に進んでいく。
 それは財政需要増(社会保障を必要とする人が増える)と税収減
 (担税力のある人の減少)が同時に来ることになり、都市経営は
 きわめて難しくなる。どのような仕組みづくりが必要だろうか。


急速な高齢化・人口減少を悲観的にとらえることなく、速やかに
順応することが必要だとは理解できた。

では、どうすればよいのか。
具体的にどう考えていけばいいのか?

不動産開発や投資を考える場合、これからは人口動態がもたらす
ニーズの変化を強く考える必要があると思う。

次回の講義が楽しみだ。
 

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