2009年9月19日土曜日

松谷先生の授業#2(その2)


⑤社会資本形成能力の縮小(講義資料10ページ)

GDPは1年間に生み出された富の量で、およそ500兆円。
いまその7割が消費にまわっている。

 GDP = 消費 + 貯蓄(=投資)

日本の個人金融資産は1500兆円くらいといわれているが
この残高はすでに「投資」され生産設備になっている。
投資は毎年の貯蓄で行われる必要がある。


ここでを考えると、

 GDP = 個人消費 + 税(公共の投資) +貯蓄(民間の投資)

高齢化すると消費は増え、貯蓄(=投資)は減る。
経済全体が小さくなる中で、消費は増えるので、
投資余力がとても小さくなってしまう。

民間投資と公共投資が競合したら?

  ↓

民間の企業活動が富の源泉だから
民間の設備投資を優先しなければならない。

言い換えると、公共事業許容量は動かせないので、都市を
維持するには、維持更新改良費を下げないといけない。



都会で公共事業許容量と維持更新改良費がクロスしたら...
廃棄された都市施設は自然には帰らずスラムになってしまう。


つまり東京は、「流通の縮小」と「社会資本形成力の縮小」という
変化により、今のままの姿では都市を維持できない!
(富を増やすことと、小さな財政を考えなければならない)


技術開発力を高めるには?

技術開発力の源泉は、人にある。
日本は、教育改革 + 研究開発費で技術開発力を高めようする。
世界の常識は「人材獲得」
高い報酬や魅力的な研究環境で、優秀な頭脳を引き寄せている。

一方で、「東京」は世界の中で田舎になりつつある現実がある。

外国為替取引高を見てみると、この7年間で
  ニューヨーク 2.3倍 2941億ドル
  シンガポール 1.7倍 881億ドル
  東京     1.5倍 702億ドル

と、東京の伸びが小さく、規模でもシンガポールに抜かれている。
ちなみに、断トツ一位はロンドン市場で4450億ドル。

また、外国通信社の支局は、東京から北京に移ってしまった。
もともと東京は政治的に田舎であったが、いまでは経済でも
田舎になりつつある...

そんな東京では、お金を出しても、人が来ないかもしれない。
優秀な研究者・技術者は自己顕示欲が強く、目立つ場所で
働きたいと思う。そういう人たちは、東京で仕事をしても、
世界に発信できないと考えている。

では、どうするか?

解決策は、外国企業を呼び込むこと

外国企業で働けば、仕事の成果はその会社を通して
世界に発信されるので、優秀な頭脳も呼び寄せられる。

イギリスはこれで成功した。いわゆる「ウインブルドン方式」で
ロンドンで活躍する企業に民族資本は無い。
外資企業が富を作っていて、それを国民も享受している。
外国人をうまく使うシステムになっている。

東京という場で、世界の企業が入ってきて活動して
そこで生み出される富を活かすようにすればいい。
わが国では、国際化というと世界に出て行くことを考えるが
これからは外国人・企業を呼び込まないといけない。

もっと国際化することを考えないと、技術力は維持できない。

その時、行政のあり方、まちづくりのあり方は
変わらざるを得ない。


外国企業を誘致するのに、極東という地理的に離れていることは
マイナスになる。でもそれを補う魅力を作ればいい。

上海がもてはやされるのは、10億人の市場成長力だが、
それに加えて、何でも出来る企業活動の「自由」
あるからだ。
日本には財界の求める規制が数多くあり、外国企業は
自由な活動が出来ない現実がある。

企業誘致には内外無差別が大事。
ただし、外国人の草刈場にさせない抑えも必要だ。

例えば上海では、上海人の雇用の義務や、利益の一部は
上海に再投資させる制限を設けている。

場(市場)を貸す理由とガバナリティ(governality 統治能力)が
必要だ。

それが無理なら、内側に閉じこもることになるが、
この場合は縮小は避けられない。

どちらを選ぶか、我々は岐路に立っている。いまが判断するときだ。


次回の講義に続く。
 

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