2009年12月11日金曜日

文化資源としての炭鉱展


川俣正の名前に惹かれて目黒区立美術館に行ってきた。



炭鉱と聞いても実感はないね。
労組の研修で、むかし大規模な争議があったとか聞くくらいで。
あとは『青春の門』を連想したり。

 

美術展というよりも、炭鉱をテーマにした生活文化史の発表なんだけど
炭鉱、山の暮らしが、なまなましくイメージできる内容だ。

『女鉱夫』を見て、女も山に入るのか、と感心たら、展示を見るうちに
もっと過酷で辛いことが分かってくる。
少女の頃に山に入り、その後は娼婦になり、また鉱夫になるなんてもの
ザラにあったという。

90歳くらいの老婆の肖像の横にあるインタビューに
「わしらくらい苦労したものはおらん」
の言葉があり、そのとおりだろうと思った。

 

炭鉱の風景に思いを寄せる絵、廃鉱となった場所の写真、
煤だらけの鉱夫の写真、労働運動のポスターなどなど
史料としてとてもよくまとまっている。

炭鉱の辛さから脱走した人間を拷問する様子の絵があったり
泥水のような不衛生な風呂に男女一緒に入る様子が紹介されていたり
山底に溜まった水(重金属が含まれてる)を煤ってまた労働する姿があったり。
現代の都市生活とのあまりの違いに驚き、頭が痺れる。
わずか数十年前まで、こんな世界があったんだと感じる。



文化史料としか見えないものが多い中で横山操の『夕張』は別格だった。
黒々とした煙を噴き上げる夕張の炭鉱、工場の様子を描いた日本画で
写実的でありかつ心象がよく表われててこれは美術品だと感じた。

そして、川俣正のインスタレーション。
夕張の町を表したもので、圧巻。これも見る価値あり、な作品だ。


この展覧会のもう一つ面白いところは、夕張育ちの演出家今野勉らによる
炭鉱講座<夜の美術館大学コールマイン・アート学科>があること。

さらにもう一つ。


ポレポレ座で関連企画として炭鉱映画祭をやっていること。
公立美術館と民間の劇場のコラボレーションは初めてのことらしい。

会期は12月27日まで。これはお勧めです。
 

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