2009年7月2日木曜日

玉三郎はいい男


いい男だねぇ...

みんなが慕うのがよく分かるよ。惚れたぜ!


東劇でみたシネマ歌劇「牡丹亭」の感想です。

  

これは中国・蘇州で坂東玉三郎が主演した昆劇『牡丹亭』を
映画化したもの。

2部構成で、1部は玉三郎が蘇州に赴き稽古を積む風景の
ドキュメンタリー。そして2部が、舞台の映像だ。

まず、稽古場の様子が、丁寧に紹介されている。

玉三郎が蘇州を散策する様や、ひとつひとつの動きを
丁寧に指導する様子、2年に及ぶ稽古を地道に重ねていく
姿が描かれている。

昆劇ではこの数十年、女形の役者はいなくなってしまい
女優が演じるようになったそうだ。
そこに玉三郎が参加することで、昆劇の伝統の復活と、
同時に、歌舞伎役者が参加するという新しい風が
吹き込まれることになった。

歌舞伎と昆劇がぶつかることは無く、俳優同士が
いい舞台を作っていこうとする作業が実に興味深い。

そして何よりも玉三郎の振る舞い、表情、声の美しさだ。
あそこまで自然体に見せながら、心の行き届いた動きが
できるんだ。ほんとうに驚いた。

それを昆劇の若い俳優がどんどん吸収している。
稽古時には、硬かったり、すこしぎこちなかった動きが
舞台ではやわらかく、またちゃんとしたリズムになって
玉三郎演じる主役を美しく引き立てている。


中国の舞台を良く知らなかったから、すごくゴージャスな
ものを予想していた。

昆劇は、そんなことは無かった。
舞台衣装は、色をふんだんに使った華やかなものだけど
舞台装置は最小限だ。
場面展開も、背景の幕を入れ替えるくらいで、全ては
役者の演技で表現する。
花園を散策する、逢瀬、自画像を描く、母娘の会話、
仲秋の夜の雨、自画像を探し出す、蘇って結ばれるとき
それらを、役者の演技が表現している。

そうとうな力量が役者に求められる劇だと分かる。

ただ残念なのは、スクリーンからは、舞台の空気、ライブ感が
伝わってこないんだ。
見る人が、これまでの経験から、その雰囲気を補う必要がある。
もう少しカメラを引いて映像化したほうがよかったかな。

その反面、表情、指先までの細やかな動きは良く分かった。

シネマ歌舞伎らしさってなんでしょうね。
舞台のライブ感を映像化するというスタンスではなく
新たな映像作品を作っていく必要があると思った。

この牡丹亭は、映像作品としてはまだまだ改善の余地アリ
ですが、2部構成はとてもよかった。なぜ玉三郎が昆劇に
挑戦したのかがよく理解できる。


それにしても、いい男だ。

歌舞伎座があるうちに、会いに行かなくては!
そう思った。
 

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