半年振りに中村正義の美術館を訪ねてきた。
紅葉にはまだちょっと早いけど、秋晴れの気持ちのいい日の午後に
ゆっくりと鑑賞できた。


相変わらず静かな美術館だ。
館長さんが入れてくれたお茶を頂きながら、ゆっくりと
絵に向かいあえる。
正義というと、舞妓や顔のシリーズ、そして源平合戦絵巻の
印象が強いけど、今回は若いときの作品を中心に組んでいる。

『芙蓉』を見ると、若くして天才と言われたのがよく分かる。
もしかしたら、日展の関係者などは、正義に奥村土牛のように
なってほしかったのかもしれないな、なんて思った。
正義自身は、日展の枠に収まることを善しとせず
結核と闘いながら創作活動を続けていったんだけど、
今回の展示は、療養生活のときに作った作品や、友人などと
交わした手紙や自画像の習作(これがすごく楽しい絵だ!)が
紹介されていて、正義の人となりを感じることができる。
とくに印象に残ったのは
『薔薇』
『木立』
『冬山』
『関ヶ原』
『森』
療養を終えた正義に、世間は変化・熟成を期待してるとの問いに
「考えるだけで、何かが変わることはない。変に変わらなく
なっただけ」という言葉を残していて、それだけを聞くと
固いお人かと思うけど、残された絵や手紙を見ると、それは違う
ことがよく分かる。

2階の展示室には、油絵具や泥絵具、炭を使った作品もあって
岩絵具以外の画材でも創作を試みたことが分かる。
正義の絵なんだけど、なんか違う、ビミョ~な違和感が面白い。
ただ、初めて中村正義を見る人には不向きな内容だな。
と、思ったら、帰るときに、丸木美術館での展覧会の案内をもらった。
ちょっと遠いけど、行ってみるか。

正義はこんな里山の景色が好きで細山に来たんだろうな。
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