2009年4月22日水曜日

貿易収支赤字に思う

22日の統計発表で、2008年度の貿易収支が28年ぶりの赤字になった
ことが分かりました。

報道では、
① 昨年(特に前半)の資源高による輸入金額の上昇
② 昨秋からの世界的な景気後退による輸出の減少
③ アメリカの貿易赤字縮小と裏表であること
④ 資源価格が下がり、景気が底入れすれば、貿易黒字基調に戻る。
⑤ ただし、これまでの米国依存一辺倒には戻らない
⑥ 長期的には人口減少・高齢化のため貿易赤字基調になる
というものです。
なんとなく、良くないこと、という論調ですね。

でも、本当に良くないことなのでしょうか。

世界各国の貿易収支は、足し上げると必ずゼロになるはずです。
全ての国が黒字になるということは有り得ず、どこかの国が
黒字を出せば、どこか他の国が同じだけ赤字となる「ゼロサム」
という制約があります。
だから、黒字が良くて赤字が悪いということではないはずです。

じゃあ、これをどう考えましょうか。

これまでの世界の貿易収支構造は、単純にいえば「米国だけが
大幅な赤字で、その他の国々はみな黒字」という状態でした。

それがいま、米国の貿易赤字の縮小が起こっていることから
その裏返しで、日本など米国以外の国々の黒字は縮小します。

日本は直接、間接に米国への輸出に依存していたので、輸出の
急減は国内経済にも大きな打撃を与えます。だから貿易赤字を
良くないこととして報道しているのでしょう。

中には、金融危機による国際金融取引の収縮から、資本流出が
起こってる国も多くあり(例えば韓国とか)、そういうとこは
なおさら貿易黒字で資金を稼ぎ出す必要性に迫られているので、
そういった国を見て不安に思っているのかもしれません。

でも、米国の貿易赤字の縮小をカバーできる国は、海外に大量
の資産を持ち、国際的な信用力がある日本などのわずかな国に
限られます。

米国は貿易赤字を減らしていこうとしますし、加えて日本は
高齢化と人口減少が進んでいくことから、近い未来にわが国の
貿易収支の黒字縮小、赤字化は避けられないでしょう。
むしろ、日本の貿易収支が赤字化することは世界経済にとって
は望ましいことといえます。
べつに貿易を止めるというわけではありませんしね。
これまでどおり、日本は得意な生産物を輸出し、日本国内での
生産に向かない製品は輸入するという、貿易に依存した国で
あることは変わらないのですから。

大事なことは、貿易収支の赤字を、所得収支の黒字で相殺する
時代に対応することです。

所得収支は、海外へ投資した資産、海外から投資された負債の
状況で浮動します。
これまでの経常収支の黒字(=海外への資本移動)が続いて対外
純資産残高が多くなっていますし、これまでの蓄積と、今後の
投資、つまり「資産運用」がうまくいけば所得収支は拡大して
いきます。
(所得収支は円ベース把握するので、昨秋来のような円高が
 進行すると、円で見た黒字が減少する可能性はあります)

ここがポイントです。
日本国・日本人が、海外投資をしやすい環境をどう整えていくか?
そして海外投資でどうやって高い成果を挙げていくか?
こういった視点を、国レベル、企業レベル、個人レベルで持ち、
考えることで、行動することも変わってくると思うんです。
赤字を悲観していては、縮こまるばかりで、楽しくないしね。

財務省の国際収支発表
 

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