2010年5月11日火曜日

「活字離れ」に関する有識者勉強会


潜入してきた。

ニュースで知って、なんだい一部の人だけでやってるのかなんて
ちょっと僻みっぽく見ていたら、こんどは前日に開催案内がきた。
6p.m.から小一時間なので、仕事を抜け出して聞いてきた。

この日のスピーカーは斎藤環さん。
爽風会佐々木病院の精神科医でひきこもりの治療の専門家であり
サブカル評論家でもある人だ。

冒頭に司会のアイスブレーキングがちょっと面白くて
「ついったーを知っている人は手を挙げて」
「ついったーを見たことがある人は手を挙げて」
「猪瀬さんがつぶやいているのを知っている人は~」
「ついったーで猪瀬さんのつぶやきを見ている人は~」
だんだんと挙手の数が減っていく。



まず猪瀬さんが簡単な挨拶をする。
いま何がどうなって活字離れになっているのか、現状分析が必要で
斎藤さんの話はとても役立つはず。

そして斎藤さんが登壇。
パワポを使いながら話を進めていく。


臨床実感としての現状
・今の若者は、これまでに無いほど、活字に触れている。
 ただ、本というモノを読むことが減っている。
・若者に見られる非社会的傾向が拡大している。
・薄く広がる幻滅感、絶望感「これ以上成長することはないです」
・ランチメイト症候群に見られるように孤立を恐れる
・コミュニケーションという一つの尺度で身分が決まる
 スクールカースト(コミュニケーション偏重)
・メールやついったー、オンラインゲームなどネットや携帯を
 使うコミュニケーションデバイスが増えている。
・人は、人とつながることで満たされてしまい、コミュニケーションが
 充実している若者は、ネタの収集はしても、読書は必要と感じにくく
 なる状況になる。
・若者の社会(とくに学校)では、相手をキャラで捉えるキャラ社会。
 キャラ認識はコミュニケーションの便宜で、いちど固まると
 それ以外のキャラを出しても認識されない。
 過当競争とは違う、また別の過酷な社会になっている。


そして、読書の効果を活かすことを説明された。
・ひきこもりには読書か映画。それは労働や仕事ではなく
 誰にでも可能な「活動(アーレント)」であるから。
 個人的な体験(エピソード記憶に近い)であり、ひきこもりの人に
 時間の経過を意識させることにもなる。
・言葉は制約になるが、ひろい認識の幅を手に入れることにもなる。
 制約を受け入れるて自由になる。
・本好きにするには、家庭環境(親の書斎、魅力的な本棚が有効)、
 読み聞かせや、読んだ本についての感想を語り合う、学校での
 朝の読書と家での就寝前の読書、小遣いと本代は別にする、などの
 方法が有効
・高野文子『黄色い本』(講談社)は有効

さらに理想的な読書として
・好きな作家の全集を読破すること
・スローリーディング
・再読
・朗読
・暗唱
・ノートをとる、抜き書きをする
を勧めている。

また、読書のためにメディアを活用することも提案している。
・Amazon等の活用
・ブログの書評を手がかりにすること
・古典は青空文庫も活用→iPhoneで手軽に持ち出せる
読書メーターの活用
・Twitterを使い実況中継的な読書をしてみる



読書メーターとブクログは、面白い道具になるな
思いながら話を聞いていた。

斎藤さんは、多読・フォトリーディングは意味記憶を増やすこと
にはなるが、心の「血肉はならない」としていた。
そして冊数ではなく、本とどういう付きあい方をするかが大事で
半年かけて古典の大著を読む子供の事例を紹介した。
「月あたりにすればゼロ冊だけど、この読み方は読書家だと思う」
と言っていた。

ブクログ


現代の人は、ネットを使い多量の活字に触れるものの、
若者はコミュニケーション偏重社会にあるし、20~30代の
読書も減っている。
これに対して、読書の心に与えること(効果)の説明、
子供たちに読書の環境を整えていくための読み聞かせといった
方法の紹介があり、そして冊数ではないという考え方の
注意点を確認した。
また、親世代も本に触れないと説得力は無い(ある程度の年齢まで
ロールモデルは必要だ)というポイントも確認した。

読書離れを解消するには、若者も大人も同時に、本に触れる環境を
つくっていく必要があるな、と思った。
この程度の気付き、当たり前でしょ、いまさらじゃん!と言われる
かもしれないけどね。

スクールカーストがあるのか!とか、認識を新たにしたって
感想を漏らす人がたくさん居て、それを聞いて、おいおい~
今日の話は新聞や週刊誌によく書かれてるじゃん、そんなことも
知らなかったのか?と、そこんとこがちょっと不安になった。

この勉強会で問題意識に気付いてくれればいいんだけどね。

次回は5月19日で、スピーカーは泰羅雅登さん。
これも聞いてみるつもりだ。
 

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